新しい輪島塗の挑戦 - 今の時代の人々に、使いやすさとほっとする瞬間を-Part2

August 16, 2018

新しい輪島塗の魅力「漆布みせプレートシリーズ」(1からつづく)

 

表面がザラりとして金属カトラリーにも強い「makiji(蒔地)」と並び、輪島キリモトが開発したもう一つ新しい漆塗シリーズが「漆布みせプレートシリーズ」だ。

 

このシリーズは基盤となる木材に厚い麻布を貼り付け、漆、米糊、珪藻土、砥の粉(とのこ)を絡め、布目に塗って固めている。表面には麻布の地模様が見える。漆の色を変えて、2色にしているものもあれば、単色で塗り固めているものもある。オードブルや肉野菜など、きれいに盛り付けると、まるで本格イタリアンレストランで出されるかのようなメニューを家庭でも楽しめる。陶器のお皿や器に盛られた食べ物とは一味違う、木と漆が織りなす和のテイストが楽しめる。

 

 そもそも輪島塗はどうやって作られるのか? 輪島塗は基本的にすべて分業。町の中に専門家が散在しており、木地と塗りで100以上の工程を経て、完成までに半年から数年の時間をかけて作っていく。

 

伝統的な輪島塗には大きく分けて3行程ある。木地(木の素材で作る土台)、きゅう漆(下地作業と精製漆の塗付)、加飾(文様付けや沈金などの装飾)である。最初のステップである木地づくりの部分を桐本順子さんが輪島の工房で丁寧に説明してくれた。順子さんは、27年前、大阪から輪島に嫁いできた。以来、この伝統工芸を継承するため、夫の泰一さんと輪島キリモトを支えている。

 

 

「輪島塗の食器を使うと、手や唇に気持ちいいなという感触が伝わります。すると、元気になったり、やる気が出たりしてよい連鎖が起こり、生活がきっと豊かなになると思っています。ですので、日常のちょっとしたところに『気持ちいいな』と感じてもらえるモノづくりを心がけています」と順子さんは言う。

 

 器の用途によって木地の形は異なる。削って最適な形にするのだが、椀木地や曲物木地(まげものきじ)は見事な曲線が作られ、丸い器になっていく。一方、指物木地(さしものきじ)と呼ばれる四角形の箱は、接合部分である角にまったく隙間がないように、ピタッと合わせられている。要求される精緻さは桁外れだ。この日見せてもらった木地にも接合部分に全く隙間がなく、完璧に仕上がっていた。触ると手のひらにしっくりと馴染み、確かにぬくもりを感じる。穏やかな気持ちになるのだ。まさに職人技。

 

その職人の数も今では減った。しかし、順子さんは言う、「儲かるからと言う理由で、この仕事を選ぶことは出来なくなりましたが、木や漆という天然の素材が好きだったり、日本の技を残していきたい、そして自分たちの作り出すモノを通して誰かの生活や心を豊かにしたいという思いで関わる人が多くなっています。その意味で、面白い時代になっていると思います。」一方で、需要がなければ、職人を続けることはできない。だから夫の泰一さんは製造責任を負う傍ら、全国を駆け巡り、輪島塗の良さを伝えている。

 

 漆布みせプレートシリーズもそのような中での取り組みだ。和の伝統とグローバルな現代の食文化を融合させた食器。シンプルで自己主張はしないけれど、テーブルの上に置かれていたら、思わず「まさかこれが輪島の漆器!?」と聞きたくなるようなおしゃれなお皿。「makiji(蒔地)」と同様、これもヒット商品となっている。伝統的な輪島塗と同じ素材を用い、漆の塗り方を変えて今の暮らしの中で使いやすいようにデザインした輪島キリモトの新しいシリーズなのだ。

 

もちろん、伝統産業の中でこのような新しい動きが諸手を挙げて歓迎されたわけではない。表面が上塗りで艶のある輪島塗からすると、強度のある表面がざらざらの食器は「きたない」と見なす人々もいた。「『なぜこんなものを作るのか?』と言われたこともあります(苦笑)」と桐本さん。このような意見も受け止めつつ、「今の暮らしの中で、何を作れば伝統工芸は生き残れるか」を追求しつづけている。より便利で気持ちよく、ほっとしてもらえる輪島の漆器を作るという想いを手放さなかった。

 

新しい輪島の漆器の試行錯誤を続けて31年、桐本泰一さんの活動は、2018年3月、「三井ゴールデン匠賞」グランプリを受賞した。

 

Thank you for reading, story by Diane

 

 

 

 

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