「和食を食べない日本人?!」 ― 発酵食品はなぜ今再び、注目されるのか? -Part1

January 19, 2018

 

「江戸前ペスカトーレ」、「江戸前ポモドーロ」、「醤油もろみと白髪ねぎの窯焼きピッツァ」― 通常のイタリアンレストランではあまり目にしないメニューが目の前に並ぶ。ここ千葉県柏市にあるコメスタでは、伝統江戸前鮨に使う赤酢やみりん、醤油を使ったメニューが人気を集めている。日本の伝統調味料である醤油やみりんから上手に引き出したうま味は、パスタやピザと想像以上に相性がいい。

 

 

醤油とイタリアンを組み合わせたこれらのメニュー開発など、このお店の企画を担当しているのが料理研究家であり、糀の専門家、大瀬由生子さんである。「25年前からお醤油を使ったお料理を提案しています。ほかにも、味噌バーニャカウダや塩糀のマリネ、塩糀のパスタのような食べ方もご紹介していますよ」と大瀬さんは言う。

 

 

長年、料理研究家として日本人の食生活に携わってきて、大瀬さんは、現代人の味覚や体調、ひいては心までが変化してきていることに気づいた。しかし、「この仕事を通して感じてきた人々の味覚や体調の変化は、残念ながらよい変化ではありませんでした。明らかに衰えてきています」と言う。

 

一方、大瀬さんは発酵が日本の食文化を支えてきたことにも気づいた。そこで、発酵食品を活用し、現代日本の食生活を見直そうと思ったのだそうだ。

 

味覚や体調が衰えてきている? それはなぜ? ー 和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されたし、ヘルシーな食べ物で日本人は健康かつ長寿大国ではなかったか? 心まで衰えてきているとは一体どういうことなのだろう?

 

日本食は今や世界の多くの国で流行し、箸を上手に持って食べている外国人の姿はよくテレビや映画でも流れる。そして、確かに日本人の平均寿命は2017年時点で男性81歳、女性87歳で、香港に次いで世界第2位(*1)。日本人は長生きなのだ。しかし、高齢で健康であるということと、長寿であるということはかならずしも同じではない。

発酵についてレクチャーする大瀬さん

 

 

実は、日本人みんなが必ずしも健康で、体に良いと言われている和食を日常的に食べているわけでもないのだ。和食といっても、世界的に知名度がある人気メニューのラーメン、天ぷら、焼き肉、回転寿司のことではない。昔ながらの伝統的な、しかも糀菌が生きた発酵食品を中心とする和食のことである。

 

 

1945年の終戦以来、日本人の「昔ながらの」食生活は劇的に変わってしまった。それでも1970年代ごろまでは、おそらく多くの日本人が魚介類や海藻などを多く食べ、食材は豊富になったもののバランスの取れた食事をしていた。今を遡ること30年、1980年代頃から、もう一つの大きな変化が始まった。1990年代にはパンや乳製品の消費量が増えた。またカロリー摂取量が過多になったのもこの頃からだ。2000年代に入ると、肉類や油脂類の摂取が増え、伝統的な和食はどんどん遠のいていった。今20代の人々は1990年代に、30代の人々は1980年代に、17歳以下の人々は2000年以降に生まれて、その後の新しい食文化の中で成長してきた。

 

食生活の変貌がすさまじい過去30年の間に、日本人の肥満とアレルギーも劇的に増えた。3年前の調査によると、日本人の男性では約30%、女性は19%が肥満と発表された。2000年までには、肥満症を象徴する「メタボ」(メタボリック・シンドローム)という言葉も定着するようになった。アレルギーの中でもアトピー性皮膚炎は、2014年の段階で456,000人(人口の約0.5%)とする統計から、国民の約1割にのぼるとする数字まである。「アトピー」は、1970年代には聞かなかった言葉の一つだ。

 

働く女性も増えたし、核家族も増えた。すると犠牲になったのは「食べる」こと。食生活、そして国民の食文化が変わってしまった。1900年代にバブル経済が崩壊し、多くの人は高級レストランでの豪華な外食を控えるようになった。その代りに、外で食べるなら低価格のチェーン店かファーストフードが行きやすい場所となった。

 

一方、家庭で食べる際は、徹底した利便性と効率化により、手を汚さずにすぐに準備できるレトルト食品やフリーズドライの技術が確立され、一気に広まった。驚くべき数のカレーやスープなど洋食インスタント食品の数々、コンビニの激増とそこで購入する数多くの簡単食材、調味料もケチャップやステーキソースなど、昔は日本になかった食べ物が日々の生活で登場の度合いを高めてきた。しかもそれらがどんどん低価格になってきているのは、大量生産されるからだ。大量に作ったら、流通に乗せ、保存されなければならない。当然、製造の過程で保存料や添加物、着色料などの化合物が大量に配合される場合もある。

 

日本人の食の変化を明確に示す面白い実験を東北大学が2016年に行っている。この実験は、1975年頃に食べられていた献立と現代食の献立という2つのグループに分けて、約1か月にわたり1日3食その食事を続けてもらったところ、1975年型の献立を食べ他グループの人は、ストレス軽減およびBMIの低下という結果が報告され、健康維持に有効であることが示されたというのだ。(*2)因みに、東北大によれば、1975年頃の和食とは、発酵調味料を多く用い、一汁三菜を基本とした、多様な食材を用いた献立である。

 

Part-2に続く。

 

写真提供:大瀬由生子

撮影協力:株式会社テーブルライフ

撮影:蓑内絵梨

トップ写真の食器:竹中銅器・富山(花瓶)小川宣之・京焼(花瓶の下、味噌汁)上鶴窯・小石原焼(茶碗)そうた窯・有田焼(小鉢)箸蔵マツ勘・若狭(お箸)岡田勲・信楽焼(箸置き)

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*1:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-04.pdf

*2:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160912_01web.pdf

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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キャリヨンLLCは、糀マイスターと食養アドバイザーの視点から、「糀かねのね」ブランドで、日本の米糀をもとにした発酵食養とその結果としての「ポジティブ・エイジング」について提唱し、お伝えする会社です。

 

「日本から」を志として、日本の地方にある小さな工房や伝統蔵の糀・発酵文化を、国内はもとより海外に伝えていくことを使命としています。

 

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