職人の魂が吹き込まれた能の女面


かねのねは、通常地方の魅力をお伝えするのが使命だけど、人間国宝の坂井音重師から能面についてご説明いただけたので、今日は例外的に東京から。これらの能面はすべて坂井師が主宰する白翔會所有です。

日本語で、「能面のよう」というと、一般的には感情が感じられない、無表情のことを言う。その表現とは裏腹に、実は能面はあまりにも表情豊かで、ほんのわずかな動きによって表情が全く変わるほど精巧につくられている。机の上に置いて見ていると、表情の変化はわかりづらいかもしれない。しかし、いったん能楽師がかけると、能面はたちまち役者の一部になり、生きた人間の表情以上に豊かな感情を表し始める。

上の写真が示す若い女性の面は、ほんの少しうつむき加減になると悲しげな表情になり、少し上向きになると微笑んでいるかのような表情になる。特に女性の面は、能楽師が付けて演じ始めると生き生きとしてくる。

一方、般若と呼ばれる面(下)は、の表情は恐ろしいが、実は、般若は「美人」の女性が一途な思いを募らせて、執着した悲しい心を表している。同じ女性の面であっても、ほんのわずかな角度の違いによって、まるで生きた人間であるかのように表情が生き生きとしてくるのは、もちろん能楽師の技量であるが、それに加えて、「面打ち」と呼ばれる面づくりの職人の魂やエネルギーが面に込められているからなのかもしれない。

面は木で作られている。演じる能楽師の精神性を表すと同時に、そこに彫り込まれた職人の魂も蘇ってくるかのようだ。能面の様式が完成するのは室町時代の中期から末期にかけてと言われている。室町時代には創造的な面が多く作られたようだ。近世になると、技巧が向上し、面づくりはさらに精緻化していった。

江戸時代には、江戸幕府が「式楽」と呼ばれる国が認定した芸術として能を位置づけ、国の文化振興として名大名が競って能を盛んに楽しみ、多くの役者を抱え、武器の調達や製作ではなく、装束や面作りに惜しみなくお金を使ったという記録も残っている。

上の写真は、近江女(おおみおんな)という面。おおみという作名から名づけられた。妖艶な美しい女面。

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